法人成りのメリットデメリット

個人事業として軌道に乗ってきたら、次は法人への移行が視野に入ってきます。
どの段階になれば、法人にすればいいのか悩まれる方も多いのではないでしょうか。

一概にいくらの所得になったら、というのはケースバイケースで難しい部分もあるので、今回はメリットとデメリットのお話をしたいと思います。

 

法人成りをするメリット

社会的信用

最近は資本金の要件もなくなり、比較的簡単に株式会社を作れるようになりました。
それでも、個人商店と法人では全く信用度が異なります。
お客様の信用ももちろんですが、従業員さんを雇用される際にも安心感が違いますので、求人がしやすくなったという声をよく伺います。

 

節税

    • 税率
      個人は所得によって税率がスライドして稼げば稼ぐほど高くなりますが、法人は平成29年度で実効税率が30%前後です。所得によれば、もう少し低くなるため、個人と法人に所得を分散させることによりトータルでお支払いになる税金を下げることができます。

 

    • 役員報酬
      個人の場合、収入から経費を引いたものに課税されますが、法人は役員報酬として事業主様の給与を経費処理することができるため、法人税も軽減できますし、個人も給与所得課税の場合は一定の控除額があるため、所得税でもメリットがあります。
      もちろんご家族を役員にして報酬を払われることも可能です。

 

    • 退職金
      小規模企業共済等に加入して退職金の手当てをされていたかもしれませんが、個人の事業として退職金を支払うことはできません。
      それに対し法人は会社から退職金を支払うことができます。
      法人の経費となることはもちろんのこと、生前の退職金は一定期間以上経ってのお支払の場合、所得税法上も税務上軽減措置があり、死亡退職金の場合相続税で非課税枠も大きいため有利になります。

 

    • 生命保険料
      個人での生命保険の加入の場合、生命保険料控除で一定額までの控除しか認めれていません。
      法人になった場合、法人で生命保険への加入が可能となり退職金の原資として活用することも可能です。
      またお支払の金額は加入内容にもよりますが、一定額は経費処理ができますので節税にも繋がります。

 

また節税策も個人より法人の方が対策が打ちやすい面がありますので、上記に掲げたもの以外にも状況により、節税が可能です。

 

消費税

消費税も大切な論点です。
資本金1,000万円までで設立された法人は原則2年間消費税が免除されます。
個人で売上が1,000万円を超え課税事業者であったとしても、法人は別人格とみなされるからです。

ただ、この場合でも法人で年間売上が1,000万円を超えた、翌々年度からは課税事業者となります。
また、特定期間(事業年度開始の日から半年間)の売上が1,000万円を超えた場合は、翌年度から課税事業者となりますのでご注意下さい。

 

社会保険料の加入

個人でも社会保険の加入は可能ですが、事業主様は加入ができません。
そのため国民健康保険や業種ごとにある国保に加入されている方がほとんどです。
ですが、法人になれば社会保険は強制加入となりますので、事業主様やご家族も社会保険へ加入することができ、その負担の半額を会社の経費で落とすことができるようになります。

 

欠損金の繰越

個人の場合、青色申告であっても欠損金の繰越は3年のみです。
法人であれば、9年間欠損金を繰越すことができます。1年だけ大きな損失が生じたとしても、欠損金を繰越すことで、将来の利益からマイナスすることができる税制面のメリットです。

 

有限責任

個人事業は無限責任ですが、法人は別人格ですので責任は有限です。
そのため借入金等の負債は個人の場合、事業主様が全て追う必要がありますが、法人の場合は責任が個人にまで及ぶ心配がありません。
ただ、法人で借入をする際も、代表者様が個人保証を行っておられる場合は、この限りではありません。

 

事業の継続

事業を興した場合、継続していくことは大切なことです。
ご自分の事業を次の世代へ引き継いでいく上で、法人であれば様々な事業承継対策を行うことが可能です。

 

法人成りをするデメリット

経費の増加

・法人設立費用
・社会保険への加入
・税理士顧問料(個人で顧問を雇っておられない場合)

この中でも特に社会保険料で躊躇される方が多く見受けられます。
法人では社会保険への加入は強制です。
また、社会保険料の支払いが滞った場合、分割で支払うことはできますが、原則免除されることはありません。
正社員を多数雇用されている場合等は、社会保険料+厚生年金への加入で負担が増加します。
法人成りをする前に、一度シミュレーションされるのをお勧めします。

 

手間の増加

個人の場合、家事費と事業用経費の線引きができていなかったり、不明な入出金は事業主勘定で処理されているケースも多く見受けられます。

法人の場合、お金の出入りはきちんと管理する必要があります。
そのため、お財布を個人としっかり分けて頂き、一旦銀行への振込をして頂くことが必要になったり、管理資料を増やして頂く必要が出てきます。

 

赤字でも税金がかかる

個人の場合、赤字であれば税金はかかりません。
法人は、赤字でも地方税がかかってきます。
均等割りと呼ばれるもので、その地域で事業をされている場合には最低限かかってしまう税金となります。

 

 

 

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